商品と時代背景『兼高かおる 世界の旅』をご存知でしょうか。異文化の紹介をTVメディアで手掛けた先駆的「海外紀行番組」の金字塔。番組スポンサーのパン-アメリカン航空(略称 パンナム)の機体が雄々しく空を飛ぶと、若い好奇心と海外への憧れをTV画面の航空機に便乗させたものだった。モノクロで始まり、やがて総天然カラー画像に。放送開始の翌年(1960年)にカラー放送が始まるがカラー放送対応TV機器は50万円(今の300万円相当)庶民の娯楽に色がつくのは後々の事。1959年から30年以上続いた長寿番組。70年代から始まった「徹子の部屋」はほぼ50年。彼女の部屋に同じ女学校の先輩のかおる女史が招かれる構成もあった。1986年4月から始まった「世界不思議発見」では徹子女史はレギュラーに。番組のテーマは「世界へ行こう,世界を知ろう」。1959年は奇しくもダライ-ラマ14世がチベットを去り印度へ亡命した年。かおる女史のチベット入境年は情報不足、またチベット編の記憶は残念ながら無い。もともとヒマラヤの秘境だったところへ中国の革命の嵐が吹き荒れ外部との接触が遮断された数十年と番組放映期間がリンクする。文革以降、チベット族のアイデンティティはあらゆる面で脅かされ、伝統工芸品の継承も対象になる。その為、パンデン(前掛け)等の上等品は貴族の贅沢品として生産が禁止され途絶えたかのように思われたが、1980年代、亡命チベット人との交流が一部再開されラサで絶えてしまった素晴らしい布が亡命地で織られていたことを知り,技術を再びラサへ持ち帰ったという経緯がある。チベット女性の美意識に根差した彼ら特有の伝統文化を表しているシンプルな横縞紋様の布はヤクウール糸を天然染料で染め地機織りの平織り。短い織り幅の布を用途に合わせて縫いつなげ大抵は前掛け(パンデン)に、枚数を増やして繋ぐと肩掛けにもなる。近年合成繊維や科学染料がもたらされ,伝統工芸継承の危機が予想される。今回出品の肩掛けにはチベット族が守ろうとしたアイデンティティが古来の方法で表現されている。生命を象徴する赤を基調に藍色、緑、黄、赤紫、薄紅、グレーの縞模様が奏でる永遠に絶える事のないマントラの音とリズム 『オム マニ パドメ フム』 『オム マニ パドメ フム』、、、。
商品の情報
カテゴリー | その他 > アンティーク/コレクション > 工芸品 |
商品の状態 | やや傷や汚れあり |